GUIDE / PoE
PoE給電予算の計算方法|スイッチの総電力とAP・カメラの台数の考え方
PoEスイッチでつなげる台数は、ポート数ではなく「装置全体の給電能力(総電力)」で決まります。機器のクラスごとのPSE出力を足し、余裕を見込んでも総電力に収まるかを確認するのが基本です。
この記事でわかること
- PSE出力とPD受電の違い(どちらで数えるか)
- 「ポート数×30W」では足りない理由
- 総電力124Wのスイッチに何台つなげるかの計算例
結論台数は「ポート数」ではなく「総電力(W)」で決まります。PSE出力を足して、余裕率20%ほどを見込んでも収まるかを見ます。
PSE出力とPD受電は別の値
PoEでは、給電する側(スイッチ)をPSE、給電を受ける側(AP・カメラ・IP電話など)をPDと呼びます。スイッチが給電のために確保する量がPSE出力、機器が使える量の上限がPD受電です。ケーブルでの損失があるため、PSE出力のほうが大きくなります。例えばクラス3では、PSE出力15.4Wに対してPD受電は12.95Wです。
総電力に収まるかを見るときは、PSE出力で数えるのが基本です。クラス別の値は次のとおりです。
| クラス | 規格 | PSE出力(W) | PD受電の最大(W) |
|---|---|---|---|
| 1 | 802.3af | 4 | 3.84 |
| 2 | 802.3af | 7 | 6.49 |
| 3 | 802.3af | 15.4 | 12.95 |
| 4 | 802.3at | 30 | 25.5 |
| 5 | 802.3bt | 45 | 40 |
| 6 | 802.3bt | 60 | 51 |
| 7 | 802.3bt | 75 | 62 |
| 8 | 802.3bt | 90 | 71.3 |
クラス0(クラス未指定)はクラス3と同じ扱いです。出典の表ではクラス3のPD受電が13Wと丸めて書かれていますが、ツールは12.95Wで計算します。
なぜ「ポート数×30W」では足りないのか
ヤマハの公式仕様ページによると、PoEスイッチのSWX2210P-10Gは1ポートあたり30W、装置全体で124W、給電可能ポートは8です。8ポートすべてに30Wを使えるとすると240Wですが、装置全体の上限は124Wなので、同時に使い切れません。SWX2210P-18Gは装置全体247W(16ポート)、SWX2210P-28Gは370W(24ポート)です。
つまり、ポートの数や1ポートの上限は「どこに挿せるか」を決め、総電力は「合計で何台まで給電できるか」を決めます。両方を満たす必要があります。また1ポートの上限が30Wのスイッチでは、クラス5以上(PSE出力45W以上)の機器には給電できません。
ツールで計算する例
以下はPoE給電予算の計算ツールにSWX2210P-10G(総電力124W、1ポート30W、給電8ポート)と余裕率20%を入力した結果です。機器は特定の製品ではなく、クラスだけを仮定した例です。
例1: クラス3の機器を6台
PSE出力の合計は15.4W×6台で92.4W、残りは31.6Wです。余裕率20%を見込んでも収まるため、判定は「余裕あり」です。
例2: クラス4の機器を4台
PSE出力の合計は30W×4台で120Wです。124Wには収まりますが、残りは4Wしかなく、余裕率20%を見込むと不足するため「余裕が少ない」判定になります。
例3: クラス4を3台とクラス3を3台
PSE出力で数えると30W×3台と15.4W×3台で合計136.2Wになり、124Wを12.2W超えます。一方、機器ごとの規格上のPD最大値で数えると115.35Wです。さらに、実消費を測った値(例としてクラス4の機器が12W、クラス3の機器が6W、ケーブル損失10%と仮定)で数えると59.4Wになります。
要確認
このように、数え方で結論が変わる場合、ツールは「機種・設定による」と表示します。スイッチがクラスどおりに確保するのか、実消費で割り当てるのかは機種や設定で異なります。SWX2210Pシリーズの割当方式は、本サイトでは要確認です。マニュアルで確認するまでは、確保量ベースの結果を安全側の基準にしてください。
余裕率の考え方
余裕率は規格で決まった値ではなく、見積りの一般的な目安です。増設や機器の個体差、ピーク時の消費に備えて、必要電力に2割ほど上乗せして総電力と比べる、という考え方があります。必要な値は環境で変わります。ツールの初期値は20%で、変更できます。
20%を見込んだ場合に、クラス3・クラス4の機器を何台までつなげるかを、PSE出力ベースで計算した結果です(ツールの判定が「余裕あり」になる最大台数)。
| 機種 | 総電力(W) | クラス3 | クラス4 |
|---|---|---|---|
| SWX2210P-10G | 124 | 6台 | 3台 |
| SWX2210P-18G | 247 | 13台 | 6台 |
| SWX2210P-28G | 370 | 20台 | 10台 |
実運用での注意
- ケーブル損失は長さ・種類・温度で変わります。規格のPSE出力とPD受電の差は、その分を見込んだ値です。長距離配線や延長器を使う場合は、機器やケーブルの資料で確認してください。
- 実消費電力は機器によって異なり、カメラの赤外線LEDの点灯時や接続台数が増えたときなどに上がることがあります。数値を入れるときは、機器の仕様書に記載されたピーク値や最大値を使うと安全側になります。
- スイッチの仕様は改訂や後継機で変わります。購入前に最新の公式ページを確認してください。
実際の台数はPoE給電予算の計算ツールで機器ごとに入力して確認できます。
出典
- Ethernet Alliance "Overview of 802.3bt"(クラス別のPSE出力とPD受電。2026年9月30日確認)。IEEE規格本文(有償)は参照していません。
- ヤマハ SWX2210P-10G 仕様(2026年9月30日確認)
- ヤマハ SWX2210P-18G 仕様(同日確認)
- ヤマハ SWX2210P-28G 仕様(同日確認)
本ページは、ヤマハ株式会社とは無関係の非公式の解説です。計算例の数値は、本サイトの計算ツールで再計算したものです。